『ポッピンQ』を観てきたので感想(ネタバレあり)

東映アニメーションの60周年記念作品『ポッピンQ』を公開初日、横浜での舞台挨拶付き上映回で観てきました。

元々2017年1月公開予定だったものが1ヶ月前倒しになり、上映予定劇場数も増やしてお正月映画として推される形になった作品ですが、今年は『君の名は。』や『聲の形』『この世界の片隅に』などアニメ映画のヒットが続いていたので「年を跨がず流れの勢いがあるうちに」みたいな思惑もあったんだろうと思います。

(以下ネタバレ全開なので注意)

 

 

エンドロール後のアレ

観終わった直後の感想も色々あったはずなんですが「エンドロール後のあの映像」のインパクトでほぼ吹っ飛んでしまった。完全に次回予告ですよね、アレ。エピローグみたいな内容ではなく、TVシリーズなり続編を作る前提でむしろ今作がプロローグ、Episode 0的ポジションの印象すらあります。

あの映像は舞台挨拶でも触れられていましたが、「現時点で既に続編が決まっているということは無く、応援次第で考える」というようなニュアンスの言葉を監督は仰っていました。でもあれだけの映像を作っていたり、レノの存在なんかは続編ありきみたいなところもあるので、この後の展開も既に想定して作られていると睨んでいます。 公式Twitterでも「伝えたいこと」と言っていますしね。

 

 

尺不足?

ただ、続編を考えず完結した1つの作品として観る場合は気になる点がちらほら。

まず95分で起承転結を描くという尺の制限もあって登場キャラクター個々の掘り下げが薄い。それぞれ思春期の悩みや不安を抱えているわけだけど、主人公である伊純以外はなんとな~く悩んでいたけどなんとな~く解決しちゃったという印象。ストーリーも異世界に飛ばされて世界を救う、という王道ものだからその展開に正直驚きはあまり無い。だったらキャラ同士のぶつかり合いと友情の芽生えとか、ピンチ(過去の自分)を乗り越えるシーンで感情面が揺さぶられる演出が必要なのに、リアル時間の積み重ねが短いからどうしても感情移入し難い。そもそも仲間意識が芽生える場面が見えなかった。ダンスの練習をしていたらいつの間にか仲良くなっていた感じ。

でもこれがプロローグという前提なら「そういったお話があった上」で観る続編は楽しみ。キャラそれぞれのエピソードも描かれるはず。

 

設定の消化不良

異世界に飛ばされた5人にはそれぞれ同位体という心を読むことが出来るパートナー的存在が居る。「なぜ居るのか?」という説明はなく、そういう設定として受け止めるしかない。でもこの同位体、存在としては面白いし見た目も凄く可愛らしいんだけれど「居なくてもストーリーは成立したのでは?」と思ってしまった。ダンスを教えるくらいしか役割もないし、心が読めるという設定もあまり生かされない。5人の中でキーマンとなる沙紀に至っては、そのトラウマも同位体が喋ってしまう。本人と距離を縮めるべき場面なのに同位体が邪魔になっていた印象すらある。(縮まらなかったからこそ、その後の展開に繋がりはするけれど)

でもエンドロール後のアレでは人間の姿になった同位体らしき人物がこちらの世界に来ていたように見えたので、同位体との繋がり・絆なんかも描きたいんだと思う。続編ありきで描きたいのは分かるけれど、もうちょっと本編でも活躍させて欲しかった。

 

良かった点

不満な点ばかり挙げてしまったけど、良かった点も当然あります。

まず、キャラクター原案の黒星紅白さんが描くキャラ。線が細いけど独特の「ぷにっと感」あるキャラが動くのは観ていて飽きません。個人的に5人の中では武道家のあさひちゃん、あと伊純の陸上部後輩の美晴ちゃんが可愛かった。

 

ダンスシーンも監督がプリキュア作品を担当している宮原直樹さんだけあってさすがの出来、凄かった。3DCGでのダンスシーンにおいて東映アニメーションは一日の長がありますね。余程の自信がなければ企画も通らないだろうし、オリジナル作品の推しどころとして宣伝も出来ないと思います。ダンスシーン、何度も観たいなぁ。

 

 

最後に

キャラも魅力的で可愛いしダンスで世界を救うという設定自体は面白かったけれど、オリジナルの劇場作品という枠内に纏め上げるには尺が短かったのかなという言葉に尽きます。TVシリーズの長さに再編されたらまた違った印象になるんだろうなぁと思いつつも、エンドロール後のあの映像を見てしまうとやはり続編を見たい。同じ高校に通うことになるみたいなので本編では殆ど見ることが出来なかった日常描写にも期待出来そう。5人のうち誰かの恋愛的な話が出てきても同位体にはバレバレなわけで、人間の姿になった同位体が協力・葛藤する話、もしくはいつも側に居る同位体自身に好きと似た感情を抱いてしまい戸惑う話とか(当然その気持もバレてぎこちなくなる)。続編の妄想が凄く楽しい!

東映アニメーションは子供層だけじゃなく大人向け作品も開拓していって欲しいので。
続編、期待しています。